- AIに任せられるのは、用件の聞き取り、決まった内容の案内、受付完了のSMS、要約のメール報告です。
- 人が必要なのは、命や建物に関わる緊急の対応と、家賃・契約など個別の判断が必要な相談です。
- 緊急時は、AIが用件と緊急度を判定し、要約を添えて担当部署・担当者へ振り分けます。つながらなければ次の担当者へ。この振り分けのルールを導入前に決めておくことが大切です。
AI電話の導入を考えるとき、まず気になるのが「漏水や火事の電話をAIが受けても大丈夫なのか」という点ではないでしょうか。入居者からの電話の多くは決まった用件ですが、ときどき一刻を争う連絡が混ざります。
この記事では、AIに任せる範囲と人が対応する範囲をどう分けるか、そして緊急の電話を確実に人へ引き継ぐための設計を説明します。
線引きは「緊急度」と「判断の必要性」の2つで考える
入居者からの用件は、次の2つの軸で整理すると、AIに任せる範囲が決めやすくなります。
- 緊急度:命や建物に被害が広がるおそれがあるか
- 判断の必要性:決まった案内で済むか、相手の事情に合わせた判断が必要か
どの用件をどこに置くかは、物件の設備や管理会社の方針によって変わります。
用件ごとの分担の例
よくある用件を、AIと人の分担で整理した例です。
| 用件 | 分担 | AIが行うこと |
|---|---|---|
| 火災・煙が出ている | すぐ部署へ報告 | 場所と状況を聞き取り、要約を添えて担当部署へすぐ報告 |
| 事件・事故・けが人・暴力 | すぐ部署へ報告 | 状況と場所を聞き取り、要約を添えて担当部署へすぐ報告 |
| ガスのにおいがする | すぐ転送 | 火を使わない、電気のスイッチに触れない、窓を開けることを伝え、ガス会社の緊急連絡先を案内。担当者へ転送 |
| 水漏れ・天井から水が落ちてくる | すぐ転送 | 水が今も出ているか、下の階に影響がありそうかを確認し、止水栓の場所を案内。担当者へ転送 |
| エレベーターに閉じ込められた | すぐ転送 | かご内の非常ボタンで保守会社に連絡するよう案内し、担当者へ転送 |
| 建物全体が停電している | すぐ転送 | 部屋のブレーカーを確認してもらい、建物全体なら担当者へ転送 |
| 鍵をなくして部屋に入れない | AIで受付 | 本人確認の項目を聞き取り、要約を担当者へ報告。夜間の対応方法(担当者へ転送するかなど)は管理会社ごとに決める |
| お湯が出ない・エアコンが動かない | AIで受付 | 設備・症状・在宅できる時間を聞き取り、要約をメールで報告。業者の手配は担当者 |
| トイレが詰まった | AIで受付 | 水があふれているかを確認。あふれていれば緊急として転送、そうでなければ受け付けてメールで報告 |
| 騒音・無断駐車・ゴミ出し | AIで完結 | 聞き取り、電話の中で対応の流れを案内、受付完了をSMSで連絡 |
| 家賃・契約・退去の相談 | 翌営業日に人 | 用件と折り返しの希望時間を聞き取り、担当者へ引き継ぎ |
命に関わる連絡は、受付より先に担当部署へ。AIは最初の数問で緊急度を判定し、要約を添えてすぐに担当部署・担当者へつなぎます。受付の手順を優先して、担当者への連絡が遅れることがないように設計します。緊急時の案内の内容や、夜間につなぐ担当部署・担当者の順番は、お打ち合わせでお客さまの体制をうかがい、ご相談のうえ決めます。
用件に合わせて、報告する部署を振り分ける
AIは、入居者が話した内容から用件を判断し、あらかじめ決めた報告先へ振り分けます。番号ボタンを押してもらう自動音声(IVR)と違い、入居者が自分で用件を選ぶ必要はありません。緊急の連絡ほど、誰につなぐかが大事です。AIが用件と緊急度を見分けて最初から正しい担当部署・担当者へつなぐので、電話がたらい回しになりません。AIが言葉の意図をどう読み取るかは、AI電話は言葉の意図をどこまで読み取れる?で詳しく説明しています。
| 用件 | 報告先の例 | AIが行うこと |
|---|---|---|
| 火事・事件・事故 | 担当部署へすぐ報告 | 状況と場所を聞き取り、要約を添えて担当部署へすぐ報告。つながらなければ次の担当者へ |
| 漏水・ガスのにおい・閉じ込め | 当番の担当者へ転送 | 応急の案内をして、当番の担当者へ転送。つながらなければ次の担当者へ |
| 設備の故障 | 設備の担当へ報告 | 設備・症状・在宅できる時間を聞き取り、要約をメールで報告 |
| 騒音・無断駐車・ゴミ出し | 管理の担当へ報告 | 対応の流れを案内し、受付完了をSMSで連絡。要約をメールで報告 |
| 家賃・契約・退去の相談 | 契約の担当へ引き継ぎ | 用件と折り返しの希望時間を聞き取り、翌営業日に担当者へ引き継ぎ |
※ 部署の名前と報告先は一例です。どの用件をどの部署に報告するかは、打ち合わせで会社の体制に合わせて決め、デモで振り分けを試していただけます。
AIが緊急かどうかを判定する仕組み
AIは、入居者の言葉に含まれるキーワードと、いくつかの確認の質問で緊急度を判定します。
確認の質問の例(水漏れの場合)
- 水は今も出ていますか、それとも止まっていますか
- 天井や壁から落ちてきていますか、床に広がっていますか
- 電気の配線やコンセントの近くに水がかかっていますか
迷ったら緊急として扱う
判定の基準は「迷ったら緊急として扱う」です。緊急でない電話を担当者に転送しても、担当者の手間が少し増えるだけです。逆に、緊急の電話を翌朝まで放置すると、建物の被害や入居者の安全に関わります。
導入したばかりの時期は緊急として扱う範囲を広めにとり、受付の記録を見ながら少しずつ調整していくのが安全です。
緊急時に人へ引き継ぐ流れ
AIが緊急と判断したあと、担当者に確実につながるまでの流れの例です。
引き継ぎで決めておくこと
- 転送先の順番:当番の担当者、その次、最後に責任者、のように3人程度まで決めます。
- 全員につながらなかったとき:AIが受付を続け、内容をメールで報告します。入居者に何と伝えるかを決めておきます。
- 担当者に伝える内容:転送の前に、AIが聞き取った内容の要約を担当者に伝えます。
担当者が受け取る要約の例
転送の前に、AIが聞き取った内容を担当者に伝えます。担当者は電話に出た時点で状況がわかり、入居者は同じ説明をくり返す必要がありません。
- 物件・部屋
- グランコート本町 502号室
- 状況
- 浴室の天井から水が落ちてきている。今も続いている。量はバケツで受けられる程度
- 周囲への影響
- 上の階(602号室)からの可能性。電気の配線の近くには来ていない
- 案内済みのこと
- 止水栓の場所を案内済み(502号室の止水栓では止まらず)
- 入居者の連絡先
- 折り返し先は着信番号
※ 物件名・内容は架空の例です。
設備トラブルは、AIが受け付けて担当者に報告する
給湯器やエアコンの故障など、緊急ではないものの早く直したい用件は、AIが受け付けて内容を担当者に届けます。協力業者の手配は、そのメールを見た担当者が行います。
- AIが、故障した設備・症状・いつからか・在宅できる時間を聞き取る
- 受付内容を要約して、メールで担当者に届ける
- 入居者に、受付が完了したことをSMSで知らせる
- 担当者がメールを見て、協力業者へ手配する
トイレの詰まりで水があふれている場合のように、設備トラブルでも緊急度が高いものは、メールでの報告ではなく担当者への転送に切り替えます。
導入後は、受付の記録で線引きを見直す
AIに任せる範囲は、一度決めたら終わりではありません。月に1回程度、受付の記録を見て次の点を確認します。
| 確認すること | 見直しの例 |
|---|---|
| 緊急なのに、通常の受付になった電話はないか | 判定のキーワードや確認の質問を追加する |
| 緊急として転送したが、実際は急ぎでなかった電話 | 件数が多い用件は、確認の質問で絞り込む |
| 担当者につながるまでにかかった時間 | 転送先の順番を見直す |
| AIで完結した割合 | 人に回している用件のうち、AIで完結できるものを増やす |
導入前に決めておく5つのこと
- 用件ごとの分担(AIで完結/受け付けて報告/すぐ転送/翌営業日)
- すぐ担当部署・担当者へつなぐ用件と、その判定の基準
- 用件ごとの報告先(担当部署)と、転送先の担当者の順番
- 全員につながらなかったときの対応
- 受付の記録を見直す頻度と担当者
GRITYでは、導入時にこれらを管理会社の方と一緒に決め、AIの判定の基準や話し方(プロンプト)として設計します。
まとめ
- AIに任せる範囲は「緊急度」と「判断の必要性」の2つで整理すると決めやすくなります。
- 命に関わる連絡も含めて、AIが用件と緊急度を判定し、担当部署・担当者へすぐ振り分けます。
- 緊急時は、要約を添えて担当者へ転送し、つながらなければ次の担当者へ発信する流れを決めておきます。
- 判定は「迷ったら緊急」を基本にし、導入後は受付の記録で見直します。
緊急時の引き継ぎの設計から、一緒に考えます。
GRITYは、全国の賃貸管理会社向けにAIコールセンターを構築・運営しています。今の当番の体制や転送先を伺ったうえで、AIに任せる範囲をご提案します。全国どこでも、訪問での打ち合わせに伺います。伺ったお話をもとに目的に合わせたデモをお作りし、実際に電話をかけて試していただけます。
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